ホーム / 恋愛 / お嬢!トゥルーラブ♡スリップ / 【第2部】 第2話 日常①

共有

【第2部】 第2話 日常①

last update 最終更新日: 2025-08-28 19:01:05

「いってきまーす」

 祖父に手を振る私の隣で、龍は軽く会釈する。

 玄関の前に立ち、私たちに手を振る祖父。

 以前は、組の者たちが玄関前に整列し、大勢で見送ってくれていたんだけど……。

 私が「やめて」とお願いした。

 わざわざ、ねえ?

 仁義や礼節を重んじる世界なのは、わかる。

 でも、皆総出でお見送りされるのは、ちょっと。

 私は祖父に見送られながら、龍と共に家の門をくぐった。

「今日も、いい天気っ」

 空から降り注ぐ太陽の光に目を細めながら、私は大きく伸びをする。

「最近いいお天気が続きますね。洗濯日和で助かります」

 龍は穏やかに微笑んだ。

 そう、彼は毎日、洗濯もしてくれているのだ。

 もちろん、私の下着やおしゃれ着は洗わないようにしてもらっているから、そこは大丈夫。

 主婦顔負けに家事をこなす龍は、私なんかより、よっぽど女子力が高い。

 だけど、彼のすごいところはそれだけじゃない。

 喧嘩の腕は超一流。

 めちゃくちゃ腕っぷしが強く、組の中でもトップの実力を誇る。

 頭も切れ、作戦を立て支持を出すのも的確。あらゆることをそつなくこなしてしまう。

 とても頼りがいがあって、皆からの信頼も厚く、組の中では完全にリーダー的存在だった。

 外見だって、そんじょそこらの男たちに負けないくらい格好いい。

 ……モテる、らしい。

 私は知らないんだけど、組の連中がそう言ってた。

 確かによく見ると、龍はイケメンだもんね。

 これは、彼女である私の立場がそう見せているだけかと思っていたけど――どうやら違うようだ。

 そんな彼が、いったい私のどこを気に入ってくれたのだろう。

 と最近、よく考える。

 私より、ずっと女子力が高い。

 強くて、男らしくて、完璧なメンズ。

 女ならいくらでも寄ってきそうなのに……なぜ、私なのか。謎だ。

 じーっと見つ

この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード
ロックされたチャプター

最新チャプター

  • お嬢!トゥルーラブ♡スリップ   【第2部】 第2話 日常①

    「いってきまーす」 祖父に手を振る私の隣で、龍は軽く会釈する。 玄関の前に立ち、私たちに手を振る祖父。 以前は、組の者たちが玄関前に整列し、大勢で見送ってくれていたんだけど……。  私が「やめて」とお願いした。 わざわざ、ねえ? 仁義や礼節を重んじる世界なのは、わかる。  でも、皆総出でお見送りされるのは、ちょっと。 私は祖父に見送られながら、龍と共に家の門をくぐった。「今日も、いい天気っ」 空から降り注ぐ太陽の光に目を細めながら、私は大きく伸びをする。「最近いいお天気が続きますね。洗濯日和で助かります」 龍は穏やかに微笑んだ。 そう、彼は毎日、洗濯もしてくれているのだ。  もちろん、私の下着やおしゃれ着は洗わないようにしてもらっているから、そこは大丈夫。 主婦顔負けに家事をこなす龍は、私なんかより、よっぽど女子力が高い。 だけど、彼のすごいところはそれだけじゃない。 喧嘩の腕は超一流。  めちゃくちゃ腕っぷしが強く、組の中でもトップの実力を誇る。  頭も切れ、作戦を立て支持を出すのも的確。あらゆることをそつなくこなしてしまう。  とても頼りがいがあって、皆からの信頼も厚く、組の中では完全にリーダー的存在だった。 外見だって、そんじょそこらの男たちに負けないくらい格好いい。 ……モテる、らしい。 私は知らないんだけど、組の連中がそう言ってた。 確かによく見ると、龍はイケメンだもんね。  これは、彼女である私の立場がそう見せているだけかと思っていたけど――どうやら違うようだ。 そんな彼が、いったい私のどこを気に入ってくれたのだろう。 と最近、よく考える。 私より、ずっと女子力が高い。  強くて、男らしくて、完璧なメンズ。 女ならいくらでも寄ってきそうなのに……なぜ、私なのか。謎だ。 じーっと見つ

  • お嬢!トゥルーラブ♡スリップ   【第2部】 第1話 予兆……③

     挨拶を終えた龍は、忙しそうに台所へと戻っていく。 今も魚の皿を手に、居間の机へと料理を運ぶ途中だった。それを置くと、すぐにまた台所へ引き返していった。 朝食の準備に追われているみたい。 私と祖父の食事は、いつも龍が作ってくれている。  彼が家に来たときから、ずっと。 率先して家事をしてくれる龍。 私、家事は苦手だからほんとに助かる。  それに、龍の料理は超美味なのだ。 いつも、家庭的な料理を、手際よく華麗に食卓へと並べていく。 龍って、なんでもできるんだよね。  家事全般、お手のもの。 料理、洗濯、掃除——主婦も顔負けだ。 もちろん、私も負けてる。 朝の支度を整え、居間に向かう。  机の上には、三人分の朝食が所狭しと並べられていた。 白いご飯に、お味噌汁、焼き鮭、お漬物、そして納豆。 まあ、朝から豪華だこと。  目を輝かせていると、後ろから祖父の声が飛んできた。「流華、そんなところに突っ立ってないで、座りなさい」「はーい」 いつもの席に座ると、祖父も向かいに腰を下ろす。  私の隣には、龍の料理も並べられていた。 三人で揃って食卓を囲むのが、毎朝の日課だ。 祖父は龍が淹れた熱々のお茶をすすりながら、真剣な表情で新聞に目を通している。  いつものおちゃらけた顔とは、まるで別人。 こういうときは「さすが組長だな」と思わなくもない。 祖父は如月一家の組長、如月大吾。  組の人たちからは恐れられているらしいけど、私にはただの優しいおじいちゃんだ。 よくおふざけが過ぎるときもあるけど、祖父いわく、それも愛嬌……らしい。 たくさんの愛情を注いで、私を大切に育ててくれた。  本当に尊敬しているし、大事な家族だ。 「いただきまーす」 準備が整い、龍も席に着いたところで、三人そろって合掌する

  • お嬢!トゥルーラブ♡スリップ   【第2部】 第1話 予兆……②

     ヘンリーたちと別れ、早一年が経とうとしていた。 あれから、私と龍とおじいちゃんは、ヘンリーたちとの思い出を胸に仲良く暮らしている。  平穏な、普通の毎日。 ……違うことと言えば、私と龍が付き合ってること、くらいかな。 龍のことを思い浮かべると、自然と口元がほころんでしまう。 ちょうどそのとき、廊下の向こうから龍が歩いてくるのが見えた。  その姿に胸が少し高鳴り、心がふんわりあたたかくなる。 目の前に来た龍は、私に優しく微笑んだ。「おはようございます、お嬢」「おはよう、龍」 え? なんで流華じゃなくて、お嬢かって? そう、せっかく呼び方が「流華」に進化したかと思ったのに。  いつの間にか日常では「お嬢」に戻っていた。 二人きりの甘い時間のときだけ、「流華」って呼んでくれるんだよね。  まったく、もう。 彼は、神崎龍之介。通称、龍。 私の恋人であり、組の若頭。  ……組っていうのは、うちが極道一家だから。 私は如月家組長の孫娘、如月流華。 幼い頃に両親が亡くなってからは、祖父に育てられた。 だから、ごく普通の女子高生……ではなかった。  極道の世界で生きる人たちと暮らし、学校や世間からは、ちょっと距離を置かれている。  それが私の日常。 いろいろあって、龍と付き合うことになったんだけど……。 自分の気持ちに気づくまでが、長かったんだよね。 最初は龍への気持ちに気づけなくて。  でも、親友の貴子の助けや、ヘンリーの存在。 いろんな人に背中を押してもらったおかげで、ようやくわかった。 あ、ヘンリーっていうのは、私に会うためにタイムスリップしてきた王子様。 過去生で私と恋人同士だった彼は、その想いが強すぎて、恋人の生まれ変わりである私のもとへ……。  っていう、もうほんと信じられないような出来事があった。 彼が現れてからは、私の周りは

  • お嬢!トゥルーラブ♡スリップ   【第2部】 第1話 予兆……①

     私はベッドの上で、深い眠りについていた。 時刻は、真夜中の丑三つ時。 ――ゴトッ、と物音が聞こえた。  ガバッと上半身を起こす。 え、今の音……何? 暗闇に神経を集中させ、耳を澄ませる。 何を隠そう、私はかなりの怖がりだ。  幽霊の類は超苦手。 真夜中、静寂、暗闇、物音。 こんなに怖い条件がそろっていて、何事もなかったように眠れるわけがない! 私はバクバクする胸を押さえながら、キョロキョロと辺りを見渡す。 けれど、月明かりに照らされた部屋は、見慣れた風景のまま静まり返っている。 特に変わった様子は、ない。「き、気のせいか……そうだよ、きっと気のせい」 無理やり結論づけると、さっきまでの恐怖をなかったことにしようと布団に潜り込んだ。 ――ゴトゴトッ。 さっきよりも大きな音が、部屋の中に響く。 ひぃー! 助けて、ごめんなさい! 恐怖が絶頂に達した私は、何に謝っているのかもわからないまま、ひたすら心の中で謝り続けた。 頭から布団をかぶり、目をぎゅっと瞑りながら、念仏のように「ごめんなさい」を繰り返す。 そして、ふと思う。 あれ? ちょっと待て。  今の音……どこから聞こえた? おそるおそる布団の隙間から顔を出し、音のした方向へ視線を向ける。 机の引き出し。  あの辺りから、だよね? その引き出しには、あの指輪がしまってある。 そう、ヘンリーから貰った指輪だ。 ごくりと生唾を呑み込み、私は意を決して布団から抜け出した。 そろりそろりと、机へと近づいていく。 机の前に立ち、引き出しをじっと見つめる。  震える手を伸ばし、恐る恐る取っ手に手をかけた。 ええい! 思い切って引き出しを開けると、その瞬間、強烈でまぶしい光が溢れ出す。 部屋の中は、昼間のように真っ白に照ら

  • お嬢!トゥルーラブ♡スリップ   【第1部】 第53話 遠く離れても……③

     しばらくすると、アルバートがヘンリーの様子を見に部屋へ戻ってきた。  音を立てないように、そっとドアを開け中へと入っていく。 ソファーの上では、ヘンリーが幸せそうな顔でスヤスヤと眠っていた。「おやおや、しかたない方ですね」 アルバートはヘンリーの体にそっと毛布をかける。  そのとき、ヘンリーの頬に涙の跡があることに気づいた。「ヘンリー様……」 起こさないように、アルバートはヘンリーの頭をそっと優しく撫でた。「苦しいでしょうが、頑張ってください。私がついております」 その寝顔を見つめながら、アルバート自身も流華たちとの日々に思いを馳せた。 懐かしく、騒がしくも目まぐるしい……。  しかし、とても充実した、幸福だった日々。「大丈夫、いつの日かまた会えます。その日を夢見て待ちましょう……」 そのとき、窓から射しこむ優しいひだまりと、暖かな風が二人を包み込む。 それは流華たちとの日々のようだった。  あたたかくて、幸せな――  二人は幸せな夢を見る。  大好きな人のことを思い出しながら。  ◇ ◇ ◇ 「え?」 一人部屋にいた私は、なぜか誰かに呼ばれた気がして振り返った。 しかし、誰もいない。  当たり前だ、ここは私の部屋で、今は一人なのだから。 ふと、ヘンリーのことを思い出す。  彼らは元気で暮らしているだろうか。 そのとき、コトッと物音がした。 そこは、あの大切な“もの”をしまった場所。 私はそっと机の引き出しを開けた。  そこには、ヘンリーから貰った指輪が置いてあった。 小さな箱を手に取り、高鳴る胸とともに箱を開く。  可愛らしい指輪が姿を現すと、その指輪が一瞬輝きを増した。「……ヘンリー?」 もちろん返事はない。  でも返事をしてくれているような気がした。「お嬢ー、朝ごはんができましたよー」 下から龍の声が聞こえる。「はーい! 今行くー」 私は指輪にそっと触れると微笑んだ。「行ってきます」 元の場所へ指輪を戻すと、私は部屋を出て行った。 ヘンリー、私はあなたのことを決して忘れない。 だって私が時を超え、愛した人だから。 今は違う時代を生き、違う人を愛しているけれど。  きっと、またあなたと出会える。 何度も、何度でも、きっと……  大切な思い出を

  • お嬢!トゥルーラブ♡スリップ   【第1部】 第53話 遠く離れても……②

     時は遡り、十九世紀後半―― 場所はイギリス。 王宮内にある一室から、王子の嘆きが響き渡っていた。「あーあ、つまんないっ」 ヘンリーはムッとした表情をしながら、やわらかそうなソファーにドカッと座る。 広い部屋には大きなベッド、豪華な机とソファー、いくつかの本棚が備え付けられている。 床に散乱しているのは、大きな動物のぬいぐるみたち。 これはヘンリーが寂しくないようにと、アルバートが配慮し用意したものだった。「ヘンリー様、いつまでもそのような態度ばかり……いい加減、大人になってください」 散らかった部屋を片付けながら、アルバートが辟易した様子でヘンリーに声をかけた。 流華と別れてから、ヘンリーはずっとこんな調子だ。 以前のように笑うことも減り、いつもつまらなそうな表情を浮かべている。 アルバートにはその理由がわかっていたが、ヘンリーのためにも流華のことを忘れさせようとしていた。「そうだ、ヘンリー様。 今日もシャーロット様が遊びに来る予定ですよ」 アルバートが嬉しそうな微笑みをヘンリーに向ける。「ふーん、あ、そう」 ヘンリーは相変わらずな仏頂面だ。 その様子に、アルバートは大きなため息を吐く。 持ってきたある物をヘンリーに見せつけながら言い聞かせた。「シャーロット様がお嫌なのでしたら、こちらの方はどうですか?」 それはお見合い写真だった。 とても綺麗な女性がにこやかな表情で映っている。 かなりの美少女だ。 そんじょそこらの町娘とは格が違う。 綺麗で艶やかで色気もある。王家に相応しい気品と美しさを兼ね備えた女性。 近隣諸国のどこかの姫らしい。 普通の男なら大喜びするだろう、しかし……。 アルバートはこっそり、ヘンリーの態度を観察する。 写真をちらりと見たヘンリーはすぐに顔を背けた。「&h

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status